宇宙の終焉と承認欲求

哲学

ビッグバン仮説によると宇宙誕生以来約138億年が経過し、ずっと膨張を続けているとされています。普段我々は、宇宙は未来永劫続くものと考えていると思います。
社会的な成功者は、銅像・記念碑等のモニュメントを作りたがります。そして歴史上の偉大な国王は、巨大な墓を作りたがります。ピラミッド、始皇帝陵、大仙古墳等、数多の例がありますが、彼らは未来永劫、自分の功績を誇示したいと考えたに違いありません。
「歴史に名を残す」とか「末代までの恥」という言葉もありますが、何故かは分かりませんが、宇宙は未来永劫続くという前提を根拠なく受け容れているようにも感じます。
本当にそうなのでしょうか? 3つの有力な説について調べてみました。

まとめ
1.宇宙の熱的死:宇宙のエネルギーが均一になって何も起こらなくなる
2.ビッグクランチ:宇宙全体が特異点に収縮する
3.ビッグリップ:膨張し続けて素粒子レベルまでバラバラになる
結論
・宇宙は永遠ではないので人類は何も残すことはできないし、全ての功績は消滅する。

1.宇宙の熱的死:宇宙のエネルギーが均一になって何も起こらなくなる

宇宙の温度は均一ではないですが、「熱は高い温度から低い温度へ移動し、その逆は成立しない」という熱力学第二法則に基づいて考えた場合、長い目で見ると宇宙全体のエネルギーは均一に近づいていきます。
宇宙全体のエネルギーが均一になるということは「何も現象が起こらない」という「宇宙の熱的死」を意味します。

2.ビッグクランチ:宇宙全体が特異点に収縮する

ビッグバン以降ずっと膨張を続けている宇宙が、ある時点で膨張から収縮に転じ、最終的に無次元の特異点に収縮してしまう。当然あらゆる生物は死に絶えます。

3.ビッグリップ:膨張し続けて素粒子レベルまでバラバラになる

宇宙の全エネルギーの約68%を占めているといわれている「ダークエネルギー」は宇宙の膨張を加速させている原因と考えられていますが、エネルギー密度が時間と共に増加していると仮定した場合、膨張を続け最終的に宇宙全体が素粒子レベルまでバラバラになってしまう。

私は物理学者ではありませんので、各論の理論的なことは一切分かりませんが、何れの仮説も宇宙の悲劇的な終焉を示唆しています。
どの仮説が正しくても人類が生き延びることは無理そうです。
勿論、何百億年も先の話であり我々が生きている間に宇宙が終焉を迎えるわけではありません。
しかしながら、誰であろうと歴史に名は残せないし、末代まで残る恥もないことはいえそうです。アレキサンダー大王だろうが、ナポレオンだろうが、市井無頼の徒であろうが、誰でも平等に且つ永遠に歴史に名を残せません。超長期的視座にたてば、家名も子孫も一切残せません。
人間は社会的な動物であり、言語と文字というコミュニケーションツールを発明しました。
言語と文字による伝承が可能になったことにより、「歴史に名を残す」とか「末代までの恥」という発想が誕生しました。現世だけでなく死後に及ぶまで承認欲求を膨張させています。地球や太陽系、そして宇宙が永遠であるという前提を疑うこともなく。
仮に人間の脳が、一年以上前の記憶を保持できない構造で、且つ文字も無いならば、いかなる英雄譚も瞬く間に忘却されます。伝承されなければ、「歴史に名を残したい」、「末代までの恥」という言葉はナンセンスになります。
人間は普段は諸行無常という事実を忘れて生きています。
それでは「どうせ宇宙は滅ぶし、あらゆる努力は無駄である」と考えてこの世を諦観し、無気力に生きるべきでしょうか?
それも違うと思います。人間は幸か不幸か進化の過程で感情を獲得し、幸福について思考することが出来ます。
死んだ後に他者からどう思われるかということばかり心配するのではなく、生きている現在に集中し、承認欲求を目的とする幸福ではなく、本当にやりたいことをする幸福を目指せば良いと思います。
他者からの承認を得る為に、自分のやりたいことを制限することは、ある意味他者の為の人生になってしまいます。

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