ナマコの生存戦略

生物

料理でもお馴染みのナマコ。一見すると単純な生物であるようにも思えますが、その生態は非常にユニークです。
ナマコは棘皮動物に属し、ヒトデやウニと同じ仲間ですが、全世界で約1500種類、日本では約200種類が確認されているそうです。
生息域は海全体に及び、淡水や汽水域には生息しません。浅い海から深海まで、様々な環境に適応しています。サンゴ礁の海底や深海底では大きな集団を形成することもあります。人間とナマコの外観はかなり異なりますが、両方とも全世界で生息しており、過酷な生存競争を生き残ってきた点は疑いありません。どんな戦略で生き残ってきたのでしょうか?

まとめ
1.ナマコには脳も心臓もなく、目・鼻・耳・舌といった感覚器官もない
2.ナマコの合理的過ぎる生態
3.人間とナマコの戦略の違い
結論
対外的な対処の面で人間にもナマコの合理性に学ぶべき点はある。

1.ナマコには脳も心臓もなく、目・鼻・耳・舌といった感覚器官もない

ナマコの体の90~95%は水で、目・鼻・耳・舌がなく、血管も心臓もありません。明るさは皮膚の神経で感じていますが、神経細胞の集まった脳はありません。
食事は主にデトリタス(海底に降り積もって堆積した有機物)です。触手を使って餌を集め、食べます。海底の砂や泥を口に入れ、有機物を摂取して残りの砂や泥を排出することで、わずかな栄養分を黙々と吸収していきます。
泳ぎもせず、噛んだり刺したりして敵を攻撃することもしません。
驚くべきことに、攻撃を受けたら自分の腸を吐き出して、敵に食べさせている間に逃げます。
これはキュビ工器官という特殊な器官から放出される白い糸のようなもので、これが敵を驚か
せるとともに、自分自身が逃げる時間を稼ぎます。尚、腸は2ヶ月で元に戻るそうです。

2.ナマコの合理的過ぎる生態

ナマコは、生き延びることに対して極めて合理的と言えます。エネルギーを使わないように、代謝をごく低い水準に維持しつつ、無駄な動きはしません。
目・鼻・耳・舌といった感覚器官が無く、皮膚で明るさを感じるだけですので、大量の情報処理を必要とせず、脳が必要ありません。
また、体内には血液の流れをつかさどる心臓がありませんが、代わりに全身に広がった水管系と呼ばれる器官が、体液の循環や排泄、呼吸などを行います。
人間のように高度な機能に特化した臓器はありません。コストパフォーマンスが高く、汎用性の高い仕組みによって生存確率を上げ、世界中の海に適応することが出来ています。
腸を吐き出して、敵に食べさせている間に逃げる戦略にも、損切りの潔さを感じます。泳いで逃げるといったエネルギーを使う戦略は、はなから捨てています。
噛んだり刺したりして敵を攻撃することもしないので、武器の発達にリソースを使うこともしません。

3.人間とナマコの戦略の違い

人間の進化の特徴といえば、何といっても脳にあります。人間の脳は実はエネルギー消費の激しい臓器で、体重のたった2%しか占めていませんが、全体のエネルギー消費の約20~25%を占めています。
その為、人間は大量のカロリーを摂取しなければなりませんが、サバンナに生息する猛獣と比較すると、人間の戦闘能力は弱く、そのままでは生き延びることは到底出来ません。
必然的に、集団によるチームプレイと道具の使用に頼ることになります。また、そのことがまた脳の情報処理を増加させることになり、脳が発達してしまいます。脳が巨大化した為、出産の際に未熟な状態でしか産道を通れなくなり、長期間の育児が必要となりました。集団による協働が必須となり、より社会性を高め、更に脳の情報処理量が増加しました。
何だか、人間の進化は、問題が生じた後に次々と弥縫策を繰り返しているようにも見えます。ある意味パッチワークのような進化です。
ついには、核兵器を生み出し、地球温暖化を引き起こしました。他の生物からしたら迷惑千万でしょう。
膨張することでしか進化できないのでしょうか。火星への移住も真剣に検討され始めましたが、「地球がダメなら火星」というのも短絡的ですし、常にリスクテイクして未知の領域に踏み込む方向に向かってしまいます。
有限である地球上での膨張は軋轢を生み、軋轢は不条理を生み、不条理によって精神は病んでいきます。功利主義の「最大多数の最大幸福」の原理で、精神の病んだ人間は切り捨てられていきます。
火星に移住できたとしても、人間の飽くなき膨張で火星が飽和したら、地球と同じことが起きるだけです。
脳の無いナマコに思考することは出来ませんが、思考の果てに脳を発達させた人類は本当に幸せなのかどうかについては、永遠に結論がでないのかもしれません。
人間の行動原理のOSを変える必要があるのかもしれません。

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