今そこにある不幸とラ・ロシュフコー

孤独

いつもスマホに入れて持ち歩いているラ・ロシュコーの「箴言集」にぐっとくる箴言がありました。
「自分に与えられた知性は、これから起こるかもしれない不幸を予見することにではなく、今起こっている不幸に耐えることに使った方がよい。」
人間の脳というものは、放置していると勝手にこれから起こるかもしれない不幸を予見して、ネガティブな感情を増産してしまいます。
ラ・ロシュフコーは、名門貴族の生まれであり、戦場での戦闘や宮廷での恋愛と政治的陰謀に明け暮れる日々を送りました。様々な辛酸を嘗めた経験もあり、数々の含蓄のある箴言を残しています。

まとめ
1.脳の暴走を止める
2.落ち着いて不幸の総量を把握する
3.今そこにある不幸にこそ脳を使う

結論
同様の不幸を経験している人は、地球上か歴史上に必ずいる。

1.脳の暴走を止める

将来を予見する動物は、恐らく人間だけでしょう。脆弱な身体を持つ人類が生存競争を生き延びてこられたのは、将来を予見し脳内を不安だらけにしてリスクを回避してきたからです。
恐竜のように生物界最強の身体を持っていれば、将来への不安は不要です。これから起きるかもしれない不幸を予見することは、人間の脳にとってはデフォルトの機能です。
従って孤独になって、五感からの信号が減少すると、暇になった脳は不安を大量生産してしまいます。特に不幸な状態になっていると、視界が曇ってしまいファクトに基づいた論理的思考が出来ない状態になってしまいますので、ますます論拠に乏しい不安が増産されてしまいます。私も経験がありますが、この不安の蟻地獄から抜け出すのは至難の業です。

2.落ち着いて不幸の総量を把握する

こんな時に役に立つのは、不幸の総量を把握することです。悩みへの対処法の研究と言えば、デール・カーネギーの著作「道は開ける」ですが、ここに良いヒントがあります。
不安を取り去る方法ですが、カーネギーによれば3つのステップがあります。
第一に、最悪の場合、どんなことが起こり得るのかを検討する。
第二に、最悪の事態について、必要ならば受け入れる決意をする。
第三に、受け入れる決意をした最悪の事態を改善する為に、落ち着いて時間と労力を注ぎ込む。

不安が次々と湧き起こるのは、底なし沼に底が無いと思っているからです。実際には底の無い沼はありません。落ち着いて考えたら沼の底は水深1メートルだったということもあります。まず水深を確認出来なければ、対処法も分かりません。1メートルなのか10メートルなのかで当然異なります。
水深に応じて、自分だけで対処できるのか、他の人にサポートを要請するのか、損切りして逃げた方が吉なのかを考えます。脳は課題さえ与えられれば、意外と勝手に考えてくれます。
不安を勝手に考えるのと同様です。下向きのマイナス思考を上向きのプラス思考に変える為にも、最悪の事態、即ち不幸のマックスの総量を把握するのが先決です。一旦底を確認したら、底より下はありませんから、上向きの思考が動き始めます。

3.今そこにある不幸にこそ脳を使う

精神的にどうしても復活できないことは誰にもあります。そういう時に忘れがちなのは、自分だけが不幸だと思ってしまうことです。
自分の周囲だけを見れば不幸なのは自分だけかも知れませんが、地球レベルや歴史レベルで考えたら、自分以上に不幸な人々は無限にいます。
悲しい気分の時に、悲しい音楽・映画・文学を鑑賞して泣くと、不思議と気分が落ち着いたという経験をした人も多いと思います。所謂「カタルシス効果」です。
不幸な時には、気分に任せて悲しい音楽・映画・文学に浸りまくるのが良いと思います。自分と同じ境遇の人間は、地球上に必ずいますし、過去の歴史上にも必ずいます。3次元で見つからなければ、4次元(時間)に探しに行けばいいだけです。
人間の脳は、不安を勝手に増産するどうしようもない代物ですが、共感を求めて活動することも出来ます。周囲の人間だけに共感を求めるのは無理です。同じ不幸に出くわした人間を探すのは困難だからです。
ラ・ロシュフコーの言う通り、今そこにある不幸に向き合って、まずは精神的に復活することに知性を使った方が良さそうです。そして最悪の事態を受け入れて対処を考えます。
大失敗をして不幸になっても、教訓を得たり、作品などのアウトプットに活かしたりできれば、不幸の解釈を変えることが出来ます。不幸がきっかけで新たな道を開いた人も大勢います。

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