五感の不思議(マガーク効果)

哲学

人間の五感には、時に不思議な現象が起こります。
例えば、マガーク効果は、視覚情報と聴覚情報が一致しない場合に起こる錯覚現象の一つです。具体的には、口の動き(視覚情報)と音声(聴覚情報)が一致しない場合、視覚情報が聴覚情報に影響を与えることで、我々が聞こえる音を変えてしまう現象です。例えば、「が(ga)」という音を発音している口の動きの映像に、「ば(ba)」という音声を重ねて再生すると、「だ(da)」と聞こえることがあります。不思議ですね。

まとめ
1.五感は互いに影響を与える
2.感覚とは脳内の電気信号
3.将来的には感覚を拡張できる可能性

結論
感覚は電気信号。感覚が混ざり合えば新たな芸術が生まれるかもしれない。

1.五感は互いに影響を与える

一般的には聴覚は耳から聞こえた情報だけに依拠していると考えてしまいがちですが、視覚からの影響も受けています。目からの情報と耳からの情報に整合性がとれなくなると、脳が勝手に辻複を合わせようとするのかもしれません。
マガーク効果以外にも、五感が互いに影響を与える現象はあります。
例えば、ある感覚刺激が他の感覚体験を引き起こす現象のことを共感覚と言います。例えば、音楽を聴いて色を見る、文字を見て味を感じるなど、一つの感覚が別の感覚を自動的に呼び起こすことが特徴です。
共感覚は、一部の人々に先天的に見られる現象であり、創造性や記憶力に影響を与えることがあるとされています。私には共感覚はありませんが、出来ることなら体験してみたいですね。
また、味覚と嗅覚には密接な関係があると言われます。食物の風味を感じるためには、味覚と嗅覚が組み合わさる必要があります。鼻をつまんで嗅覚を遮断した状態で食事をしても、全くおいしく感じません。

2.感覚とは脳内の電気信号

五感からの感覚は電気信号として脳に届くわけですが、脳内で信号が何かのきっかけで交錯したり、矛盾が生じたりすると脳のアウトプットが変化するのかもしれません。
共感覚が起きる具体的な原因はまだ完全には解明されていないようですが、共感覚者の脳では、通常は別々の感覚を処理する脳領域間に神経結線が存在し、これが共感覚を引き起こすという仮説があります。
アメリカの哲学者トマス・ネーゲルは、主著である「コウモリであるとはどのようなことか」において、コウモリの経験は人間に完全には理解できないと主張しました。コウモリは超音波を発し、その反響音(エコー)を聴くことで周囲の環境を把握します。これをエコーロケーション(反響定位)と呼びます。コウモリだけでなく、イルカもその能力を使います。潜水艦のソナーと同様です。
マーベル・コミックスのスーパーヒーロー「デアデビル」は、幼い頃に事故で視力を失いましたが、その代わりに超人的な聴覚や触覚、嗅覚、味覚を得ました。視覚障害者の中には、舌打ちでクリック音を発し、周囲からの反響によって外界を知覚するエコーロケーション能力を持つ人がいます。

3.将来的には感覚を拡張できる可能性

人間には原則として五感という五種類のセンサーしかありませんし、その機能も限られています。視覚は可視光線以外、例えばエックス線を見ることが出来ませんし、聴覚は超音波を聞くことが出来ません。
しかしながら科学技術が進歩すれば、五感の制約を超えた超能力を獲得出来る日がくるかも知れません。
また、科学技術によって、別々の感覚を処理する脳領域間に人工的な神経結線を形成することで、多くの人が共感覚を獲得することが出来るかもしれません。
こうしたことは、人間の脳に変化をもたらし、進化の地平が開ける可能性もあります。
共感覚の獲得は、思考や言語にも変化を起こします。「ざらざらした音」、「苦い色」、「赤い音」といった文学表現でしかなかった言葉が、メタファーでなくなります。
芸術の表現もバラエティに富んだものになります。感覚が混ざり合えば新たな芸術が生まれるかもしれません。
コウモリの環世界を是非体験してみたいですね。海外旅行も良いですが、他の生物の環世界を体験するエンターテインメントも有りだと思います。

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