マッドマンセオリー(狂人理論)

歴史

マッドマンセオリー(狂人理論)という理論があります。この理論の核心は、国際的な外交戦略上、相手国に対して自国が予測不可能で、極端な行動に出る可能性があると信じさせることにより、相手国を威嚇し、譲歩を引き出すことにあります。
近年、こうしたスタンスをとる国が増えている気がします。日本の隣国には3つの核保有国があり、最もマッドマンの被害に晒されている国といえるかもしれません。

まとめ
1.元々はニクソン大統領の理論
2.核兵器が次々とマッドマンを生む
3.マッドマンにはマッドマンしか対抗できない

結論
マッドマンが本当にマッドマンとなった時に世界は滅亡する。

1.元々はニクソン大統領の理論

マッドマンセオリーは、元々はアメリカ大統領リチャード・ニクソンが外交政策において用いた戦略の一つです。ニクソンは、ベトナム戦争においてこの理論を利用し、北ベトナムとの交渉においてアメリカが核兵器を使用するかのような印象を与えることで、交渉を有利に進めようとしました。ニクソンと国家安全保障担当補佐官キッシンジャーは、この理論を実践することで、政策の不確実性や危険性を演出し、相手に圧力をかけることを狙いました。
マッドマンセオリーは、ドナルド・トランプ大統領について言及されることもあります。北朝鮮やイランとの外交において、予測不可能な行動を取ることで、アメリカの立場を強化しようとしたとも言われます。

2.核兵器が次々とマッドマンを生む

マッドマンセオリーは、様々な政治家について言及されています。先述のニクソンやトランプ以外にも、ロシアのプーチンが自国の脅威となる存在に対して核兵器により報復することを公言していますし、北朝鮮の金正恩も突然のミサイル発射実験や核実験を行うことで、国際社会を驚かせ、緊張を高める戦略を採用しています。
これらの国の共通項は核保有国ということです。核兵器が誕生する迄は、各国の戦力はほぼ各国の国力に見合っていました。
現在、核保有国とされている国は、アメリカ・ロシア・イギリス・フランス・中国・インド・パキスタン・イスラエル・北朝鮮の9ヶ国です。GDPでは小国であっても核兵器は保有できます。
核兵器誕生前は、マッドマンセオリーを使用できるのは大国だけでしたが、現在では核兵器さえ手に入れれば、マッドマンを演じることが出来ます。
北朝鮮がミサイル発射実験を繰り返すのは、アメリカを射程圏内に収める為であり、アメリカに対してマッドマンセオリーを適用することが目的です。
核兵器が世界中に拡散していった場合、世界中にマッドマンが量産され、国力の小さい国の独裁者でも恫喝外交を繰り返すようになるかもしれません。イランが秘密裏に核兵器開発を進めているのではないかと疑われてきましたが、開発に成功した場合、敵対するイスラエルとイランの双方が核保有国となり、お互いにマッドマンを演じることになりかねません。
核兵器が流出してスパイが活躍するといった類の映画は枚挙に暇がありません。
バイデン政権が続く状況下でプーチンはウクライナに侵攻しましたが、他国に攻め入るには、アメリカにトランプのようなマッドマンがいない時に限るという判断もあったと思います。

3.マッドマンにはマッドマンしか対抗できない

日本の隣国にはロシア・中国・北朝鮮の3つの核保有国があります。北朝鮮は頻繁に日本海にミサイルを発射しており、挑発を繰り返していますが、日本が取れる対抗策はせいぜい「抗議」や「経済制裁」が関の山です。そのような常識的な報復しかしてこないと足許をみられていますし、日本の政策は想像することが極めて容易です。日本のスタンスはマッドマンセオリーの真逆で、常識人セオリーです。
結局のところ、マッドマンの恫喝に対抗するためには、こちらも対抗してマッドマンになるしかありません。
アニメ「東京リベンジャーズ」ではないですが、暴走族の抗争と同様、どっちの総長の方が残虐で狂っているのかで雌雄を決することになります。
隣国の殆どが、マッドマンに支配される国となった場合、日本人はどこまで正気を貫けるのでしょうか。
第二次世界大戦前、ヒトラーというマッドマンが誕生した際に、当初イギリスのチェンバレン首相はナチスに対して有和政策をとりました。チェコスロバキアのズデーテン地方をドイツに割譲することに同意する等恫喝に応じてきましたが、最終的に行き詰まり、チャーチル首相になってから、英独は全面対決に至りました。
マッドマンの正体が常識人であれば良いのですが、マッドマンが本当にマッドマンになった時には、核戦争の連鎖で人類は本当に滅びます。
マッドマンを演じていたニクソンについても、アルコール中毒であり、睡眠薬を常用するほどの不眠症に悩まされていたとの証言が、外交官や政府職員、家族や友人によってなされています。世界の運命は、剣の刃を渡るが如しです。

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