リンダ問題

バイアス

合接の誤謬(もしくは連言錯誤)とは、一般的な状況よりも、特殊な状況の方が、可能性が高いと誤判断することです。「リンダ問題」としても知られています。
リンダは31才、独身、率直な性格で、とても聡明な女性です。大学では哲学を専攻しました。学生時代には、差別や社会正義といった問題に深く関心を持ち、反核デモにも参加しました。
その情報を回答者に伝えた後に、以下の質問をします。
以下の1・2のうち、どちらの可能性が高いでしょうか?
選択肢1.リンダは銀行窓口係である。
選択肢2.リンダは銀行窓口係で、フェミニスト運動に参加している。
この質問を受けた人の大多数が選択肢2を選択してしまいます。数学的に考えれば、選択肢2の方が、可能性が低いことは明確ですが、どうして間違えてしまうのでしょうか?

まとめ
1.代表性ヒューリスティックで判断する脳
2.進化の過程で獲得した合接の誤認
3.悪用されることもある

結論
バイアスを情報操作に利用するという考え方もある。

1.代表性ヒューリスティックで判断する脳

「リンダ問題」を考えた行動経済学者のトベルスキーとカーネマンは、次のように主張しています。
即ち、大多数の人がこの問題を誤答する原因は、このような判断をする際に、代表性ヒューリスティック(特定のカテゴリーに典型的と思われる事項の確率を過大に評価しやすい意思決定プロセス)を用いるからであるということです。
選択肢2は、数学的に考えれば可能性は低いのは明らかですが、選択肢2の内容を読むと、問題文が提示するリンダの描写(31才、独身、率直な性格で、とても聡明な女性。大学では哲学を専攻。差別や社会正義といった問題に深く関心を持ち、反核デモにも参加。)が、フェミニスト運動参加者に典型的な属性であるという印象を回答者に与えてしまう訳です。

2.進化の過程で獲得した合接の誤認

「リンダ問題」のような合接の誤謬は、どうして起きるのでしょうか。
諸説あるようですが、我々の祖先が生き残る為に、認知的なショートカットや代表性ヒューリスティックを進化の過程で発達させてきたという考え方があります。人が判断や意思決定を行う際に、典型的な特徴やステレオタイプにどれだけ合致しているかを基準にすることで、脳の負担を軽減している訳です。
特に、生存に直結するような情報は、迅速に処理する必要がある為に、パターンで認識して迅速な判断を下す能力を進化させました。緊急事態の場合には、ゆっくり緻密な分析をしている場合ではありません。寧ろ拙速であることが生存確率を高めます。
人は街中を歩いているだけでも、様々な情報をキャッチしますが、パターン認識で次々と判断していかないと情報処理は停滞してしまいます。例えば、店の看板を見ただけで、パターン認識してどんな店かを予測します。

3.悪用されることもある

こうした代表性ヒューリスティック、即ち特定のカテゴリーに典型的と思われる事項の確率を過大に評価しやすい意思決定プロセスは、しばしば悪用されることもあります。
例えば、有名人に関わるゴシップです。清廉潔白だと思われていた人の不倫報道があった場合、大衆は代表性ヒューリスティックによって不倫をするようなカテゴリーの人間と評価し、ラベリングしてしまいます。不倫報道が事実かどうかは関係ありません。以降、色眼鏡で見られることになります。何か別の不芳な事件があると「やっぱりそういう人なのね」と思われてしまいます。
また、バイアスを情報操作に利用するという考え方もあります。例えば、自分の周囲に対して、適時・適切に情報を流すことです。
例えば、「血液型はA型である」「田舎の出身である」「公務員である」という自分の情報を周囲に流したとします。そうすると代表性ヒューリスティックによって、周囲から「几帳面で純朴で真面目そうな人」だと思わせることが出来るかもしれません。情報は事実である必要はありません。
所属する集団に応じて、周囲からどう思われたいのかを考えて、流す情報を戦略的に変えることも可能です。状況に応じて自己紹介の中身を変えている人はよく見かけます。スパイ映画でもよく見かけます。
事実の情報だけしか流さない場合でも、どの事実を流すのか選択することは出来ます。この人には言ったけど、あの人には言っていないということもよくある話です。

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