人類と昆虫

生物

最も繁栄している生物とは何でしょうか。
生物の既知の総種数は約175万種で、このうち昆虫は100万種、哺乳類は約6,000種、鳥類は約9,000種、維管束植物は約27万種となっています。
繁栄の度合いを測る指標にも様々あると思いますが、種数においては昆虫の圧勝といっても過言ではありません。
昆虫は節足動物に分類され、体が頭部・胸部・腹部に分けられ、胸部に3対の脚を持つものを言います。節足動物の一分類に過ぎない昆虫が、これだけ繁栄しているのは何故でしょうか。

まとめ
1.人類1種に対し昆虫100万種
2.圧倒的な多様性を獲得した秘密
3.人類と昆虫の戦略の違い

結論
ダイバーシティとは人間の昆虫化かも知れない。

1.人類1種に対し昆虫100万種

実は我々人類にもかつては様々な種がありました。ヒト属に限って列挙しても、ホモ・ハビリス、ホモ・エレクトス、ホモ・ネアンデルターレンシス(ネアンデルタール人)、ホモ・サピエンス等の種があります。
然しながら、現生するヒト属の種はホモ・サピエンスのみです。つまり我々現生人類です。他は全て絶滅しました。
ホモ・ネアンデルターレンシス(ネアンデルタール人)は、死者を埋葬する高い知能と優しい心を有しており、技術も非常に洗練されていたとされています。現生人類より脳容量は大きく、頑丈な体格を持っていましたが、食物や住処をめぐる現生人類との競争に敗れ、最終的には絶滅したと考えられています。つまり同じ種での潰し合いです。
一方で昆虫は人類とは異なる戦略をとることで繁栄を謳歌しています。

2.圧倒的な多様性を獲得した秘密

一般的な昆虫の特徴についていえば、翅があり空を飛べること、体が小さいこと、外骨格であること(骨が無い)、寿命が短く世代交代が早いこと、多くが完全変態すること(卵・幼虫・サナギ・成虫)、精巧な微小脳を持つことが挙げられます。
人類と比較すると逆張り戦略に見えます。昆虫と比較した場合の人間の特徴は、空を飛べないこと、体が大きいこと、内骨格であること(骨がある)、寿命が長く世代交代が遅いこと、完全変態しないこと、巨大な脳を持つことが挙げられます。
昆虫が繁栄したのは、環境への適応力がずば抜けて優れていた為です。
まず、翅による飛行が可能であり、食料や生息地、配偶者を探す為に自由且つ広範囲に移動して最適な場所を選べること、更に1世代の期間が短く進化の速度を早めることができた為、環境への適応が極めて早いことが利点と言えます。
また、体が小さい為、餌も少量で済み、隠れやすく、小さな環境ニッチを利用することが可能である為、一定の面積に多数の種類や個体が共存できます。更に固い皮膚(外骨格)で体を保護することで体の水分を保つことが可能です。
多くの昆虫は完全変態しますが、幼虫と成虫で異なる食料を摂取し、異なる生態的ニッチを利用する為、競合を避けて生存確率を高めることができます。親子で同じものを食べる人問とは異なります。

3.人類と昆虫の戦略の違い

人類も昆虫も地球上の殆ど全ての環境に適応しています。共に熱帯雨林から砂漠、極地の寒冷地まで、幅広い気候と地形に適応する能力を持っています。然しながら生存戦略は真逆です。
人間は、環境に適応する為に身体の外側に道具を加えていきます。寒ければ服を着る、視力が足りなければ眼鏡をかける、戦闘の為に武器を作る等、身体機能を拡張するガジェットを外側に足すことで環境に適応していきました。その為にも知能を司る巨大な脳は不可欠です。
昆虫は、環境に適応する為に身体自体を変えていきます。巨大な脳は不要ですが、高速な世代交代による進化が不可欠です。高速な進化によって小さな環境ニッチに次々に適応していった結果、100万種にまで多様化しました。
昨今、人間社会ではダイバーシティが盛んに叫ばれるようになりました。多様性が企業の売上や利益に貢献し、競争力の源泉となるという考え方も浸透しつつあります。ダイバーシティとは、ある意味で人間の昆虫化かも知れません。
昆虫と異なる戦略をとった人類は、ダイバーシティの面では遥かに昆虫に及びませんが、それでも人種・性別・国籍・宗教・性的指向・年齢等の多様性は存在します。
昆虫の特徴である「翅・小さい体・外骨格・短い寿命・完全変態・微小脳」のうち、人間にも応用が効くのは恐らく「翅」です。
しかしそれは物理的に空を飛ぶ「翅」ではなく、観念的に飛ぶ「翅」だと思います。情報を俯瞰して自分に最適な場所、即ち環境二ッチを探していくことだと思います。ネットがその扉を開いたと言えるかも知れません。

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