ギャンブラーの誤謬

バイアス

競馬や競輪やパチンコ、ギャンブルにもいろいろありますが、何回も負けているのに「そろそろ勝ちそうな気がする」といってギャンブルにのめり込む人がいます。また神社のおみくじで、何回も連続して大凶が出ると、次回こそは大吉が出ると思ってしまうこともあります。何の根拠も無いですが、何故人間はこう考えてしまうのでしょうか。

まとめ
1.ギャンブラーの誤謬
2.ホットハンドの誤謬
3.何にでもバターンを見出そうとする人間

結論
偶には予断を排し、脱パターン化して世界を眺めてみる。成功も失敗も確率は1/2。

1.ギャンブラーの誤謬

過去の出来事が将来のランダムな出来事に影響を与えると誤って信じることを、ギャンブラーの誤認と言います。例えば、コイントスで実際に何度も連続で表が出た後には、裏が出る確率が高くなると考えてしまいがちです。
1回のトスで表が出る確率は1/2、2回のトスで2回連続表が出る確率は1/4、3回のトスで3回連続表が出る確率は1/8です。
5回連続で表が出る確率は1/32になりますが、4回連続で表が出た後の時点で次(5回目)に表が出る確率は、当然ながら1/2です(表か裏)。
つまり、1回目のトスの直前時点で5回連続表が出る確率は1/32ですが、4回目直後の時点で、次に表が出る確率は1/2です。それなのに何故か人間は、4回目直後の時点で、そろそろ裏が出ると思ってしまい裏にかけてしまいます。過去の結果が将来のランダムな出来事(5回目)に影響を与えるという誤った信念に基づいて判断してしまいます。
有名な事件ですが、1913年にモンテカルロカジノでのルーレットゲームで、26回連続ボールが黒に入った出来事があり、赤にかけて大損した人がいたそうです。

2.ホットハンドの誤謬

ギャンブラーの誤謬とは逆のパターンで、ホットハンドの誤謬と言われるものがあります。
ホットハンドとは、スポーツやゲームなどで、プレイヤーが一時的に連続して成功を収める状態を指します。例えば、バスケットボールの選手が連続してシュートを決めた場合、その選手がホットハンドを持っていると考え、次もシュートを決める確率が高いと信じてしまう傾向があります。
コイントスと同様ですが、各シュートは独立した確率の出来事であり、過去の成功が必ずしも未来の成功を保証するものではありません。4回連続でシュートが決まったとしても、5回目のシュートが決まる確率は、過去4回と全く関係がありません。
ギャンブラーの誤認は、過去の結果が未来に対して何らかの均衡をもたらす、コイントスで言えば表が永久に出続ける筈はなく、そろそろ裏が出て均衡状態をもたらすという考えに基づいていますが、ホットハンドの誤謬は、成功が続いている状態が将来も続くという期待に基づいています。両方とも、ランダムな出来事の結果に対して、誤ったパターンを見出そうとする心理的な傾向が原因となっています。

3.何にでもバターンを見出そうとする人間

ギャンブラーの誤謬とホットハンドの誤謬は、期待の方向すら逆ですが、根本の原因は同じです。即ちランダムな出来事の結果に対して、誤ったパターンを見出そうとする点です。
どうして人間はこれらの誤謬を引き起こすのでしょうか。人間が進化の過程で獲得したパターン認識の能力に関連していると考えられます。生存と繁殖の為には環境の中で有意なパターンを見つけ出し、それに基づいて行動を選択することが重要でした。その為、人間は偶然の出来事にも意味やパターンを見出そうとする強い傾向を持っています。
例えば、猛獣等の捕食者の動きのパターンを認識することで危険を回避し、食料が採取できそうな場所をパターンとして記憶し効率的に食料を獲得することができます。また、集団内で他者の行動や感情のパターンを理解することはコミュニケーションや相互扶助の基盤となります。
このように、パターン認識は生存と繁殖に関連する多くの状況で有利な能力として機能しました。旧石器時代に有利に働いたパターン認識の癖が現代人にも受け継がれている訳です。
人類のDNAに刻み込まれたパターン認識の癖は、生存と繁殖には有利な能力でしたが、現代の社会生活にとって必ずしも有利に働く訳ではありません。
失敗が何度も続くと、「今度もどうせ失敗だ」と考えてチャレンジ精神が挫かれてしまいます。生存と繁殖に関係ないことまで、パターン認識で安易に判断する必要はありません。過去の失敗は、将来のランダムな出来事に影響しません。コイントス同様、成功も失敗も確率は1/2と思っておけば丁度良いと思います。
パターン認識は、脳のエネルギー消費を抑える為には有用ですが、偶には予断を排し、脱バターン化して世界をまっさらな目で眺めてみることも大事だと思います。

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