地球温暖化や気候変動は年々深刻度を増しています。石炭・石油等の化石燃料の利用を抑制し、二酸化炭素の排出削減を急ぐべく、各国が躍起になっていますが道半ばです。
危機が顕在化してから急に慌て始めるのは、人類のお約束みたいなものですし、地球文明も事前に対策を講じる程には成熟していないということかもしれません。
化石燃料の利用に関して、いったい何時から間違えてしまったのでしょうか。
1.産業革命は当初は再生可能エネルギーでスタート
そもそもですが、再生可能エネルギーとは、自然界の循環プロセスによって継続的に補充されるエネルギー源から得られるエネルギーのことを指します。これらのエネルギー源は、使用しても枯渇することがなく、実質的に無限と考えられるため、持続可能なエネルギー供給の選択肢として注目されています。
具体的には、太陽光・風力・水力・地熱・バイオマス(植物や動物の有機物を燃料として利用)・海洋(潮の流れや波の動力、海水の温度差)等です。
産業革命の初期段階では、水力が重要なエネルギー源として利用されていました。特に、18世紀にイギリスで始まった産業革命では、水車が綿紡績工場などで動力源として広く使われていました。これらの水車は、川の流れを利用して機械を動かすためのエネルギーを提供していました。つまり、当初は再生可能エネルギーを使っていた訳です。
2.原子力以外は殆ど太陽のエネルギー
太陽光・風力・水力・バイオマス・海洋等の再生可能エネルギーは、究極的には太陽由来のエネルギーです。
太陽光は当然ですが、太陽光がなければ、風も吹きませんし、蒸発や降水といった水の循環も起きませんし、植物も育ちませんし、海流も起きません。原子力と地熱は放射性物質が関連したエネルギーですが、これらを除けば殆ど太陽由来です。
また、化石燃料は、古代の植物や動物が死んだ後、何百万年もの長い時間をかけて地中で高圧と高温のもとで分解・変化し、石炭・石油の形で蓄積されたものです。植物が光合成を通じて太陽エネルギーを吸収し、動物が植物を食べたので、化石燃料も太陽エネルギーが保存された缶詰みたいなものです。
水車による水力活用等、再生可能エネルギーだけでは人類のエネルギー需要を満たすことができなくなった結果、「太陽エネルギーの缶詰」である化石燃料に手を出したということでしよう。
3.化石燃料は資本主義と相性が良すぎる
スウェーデンの人間生態学者アンドレアス・マルムは、その著書である「化石資本」において、化石燃料と資本主義の関係について重要な指摘をしています。
先述の通り、産業革命の初期段階では、水力を利用していましたが、産業革命の進展に伴って石炭が使われるようになりました。
水力の利用は地理的な制約が大きく、水車を設置できる川の近くに工場を建設する必要がありました。これに対して、石炭を燃料とする蒸気機関はどこにでも設置可能であり、工場を都市近郊に建設することができ、労働者を集めやすいという利点がありました。
更に、石炭と蒸気機関が資本家による厳格な労働管理を可能にしたと指摘されています。石炭を使った蒸気機関は水力よりもエネルギー供給をフレキシブルに増加させることが容易です。「太陽エネルギーの缶詰」を使うからです。従って工場の生産性を急激に高めることができました。また、資本家は石炭を使用することで、労働者の労働時間を自由に設定し、生産プロセスをより細かくコントロールすることが可能になりました。水力は川の流れですので、意図的に増減させることは困難ですが、石炭はエネルギー量のコントロールが容易です。石油も然りです。
つまり、化石燃料は無限の資本増殖を原理とする資本主義と極めて相性が良かったと言えます。
太古に作られた「太陽エネルギーの缶詰」という禁断のエネルギー源に手を出したことで、利用可能な再生可能エネルギーの供給量を超えて、エネルギー消費を拡大した人類は、自ら発明した資本主義に逆に使役されることで地球環境を破壊しつつある訳です。
資本主義では恐らく地球温暖化に歯止めがかからないと思います。恐竜は巨大隕石の落下で絶滅しましたが、人類は資本主義による自殺で絶滅するかもしれません。