感情の正体とは

心理学

感情はどうしてあるのでしょうか。
喜びはともかくとして、悲しみの感情を都合よくオン・オフできないことを呪わしく思うこともあります。様々な苦悩が人間を取り巻いています。抗しがたい不条理に見舞われ死んでいく人々。孤独のなか誰からも理解されずに絶望する人々も多いでしょう。
不条理な境遇は、なにも人間に限った話ではありません。人間の子供に面白半分に踏み潰される虫や殺される為に育てられる家畜も然りです。人間以上に不条理な境遇といえるかもしれません。彼らに不条理を解する精神があるかは分かりませんが、不条理を不条理と感じる精神がなければ、そもそも不条理たりえません。

まとめ
1.感情は進化の過程で生活環境へ適応する為に段階的に発生した
2.動物時代に獲得した感情と人間になってから獲得した感情がある
3.子孫を生き残らせる為に愛情は進化した
結論
・湧き起こる感情を理性で制御できるのは人間だけ

1.感情は進化の過程で生活環境へ適応する為に段階的に発生した

感情に関する研究は徐々に進歩しているようです。
感情の萌芽は、哺乳類が誕生したころには備わっていたようです。感情は生き延びるのに必要な機能として、進化の過程で徐々に増えていったと言われています。
例えば、恐怖の感情は比較的早い段階で獲得しました。捕食者から逃げる為にも恐怖を感じる個体が生き残ったことは首肯できます。
集団生活のなかで上下関係やなわばりを明確にする「怒り」等が身に付き、人間として高度な社会性を獲得した過程で、「罪悪感」や「義理」等の割と複雑な感情を獲得していきました。

2.動物時代に獲得した感情と人間になってから獲得した感情がある

感情には、人類の祖先が主にジャングルで生活していた動物時代に身につけたものがあります。「恐怖」「怒り」などの感情は、人間だけでなくチンパンジーなどにも確認できます。
また、人類とチンパンジーの共通祖先が分岐した後に形成された感情もあります。
「恨み」「妬み」「好奇心」「希望」などが該当します。
ジャングルからサバンナに出て狩猟採集生活が始まったことがきっかけとなったようです。アフリカでは、次第に乾燥化傾向が強まり、森林面積が減少してきました。人類の祖先はそのような環境変化のなかで直立二足歩行を獲得し、サバンナへ生息域を大きく広げたことがわかっています。
狩猟採集時代は、集団から疎外されることは死を意味しました。より社会性の高い感情を獲得した個体が生き延びたと考えられます。

3.子孫を生き残らせる為に愛情は進化した

言わずもがなですが、人間は哺乳類です。
哺乳類や鳥類はカップルを形成し子供の世話をするイメージがありますが、爬虫類や魚類は卵を産んだらほったらかしですし、基本的に子供の世話もしません。
進化心理学の立場では、生物は基本的に「繁殖」と「生存」を行動原理としており、愛情含めた感情もまた進化の結果です。
爬虫類と魚類は、大量の卵を産むことで子孫を残す戦略をとりましたが、哺乳類と鳥類は少ない子供を養育することで子孫が生き残る可能性を高める戦略をとりました。
従って、爬虫類と魚類には家族愛も夫婦愛もありません。
一方で哺乳類と鳥類は、子供に愛情を示した個体、配偶者に愛情を示し協力して子育てをした個体が、より多くの子孫を残しました。そして家族愛が発達しました。
巨大な脳を発達させてきた為に、未熟な状態でないと母体の産道を通過することが出来ない都合上、人類は他の生物に比べて養育期間が長く、高度な家族愛を発達させてきました。
逆にいえば、子供が育ってしまった後に、夫婦愛が冷めるのも、ある意味で理に適っているといえます。繁殖という遺伝子の目的は達成されてしまっているからです。熟年離婚が多いのも、そうした背景があるのかもしれません。
配偶者への愛情は消えても、子供への愛情は簡単に消えません。子孫を残すという強いアルゴリズムは働き続けます。子供に先立たれることは、いつの時代も深い悲しみをもたらします。
先述の通り、感情には動物にもある原始的な感情と、人間特有の感情があります。
原始的な感情は、小脳や脳幹といった古い脳をベースとしています。人間は大脳という新しい脳を発達させました。理性を司る前頭前野もその一部です。
湧き起こる原始的な感情を理性で制御できるのは人間だけです。従ってアンガーマネジメントが出来るのも人間だけです。怒ることが本当に自分にとって得なのか思考することで状況を好転させることが出来るはずです。

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