エマニュエル・トッドの家族分類

哲学

「ソ連の崩壊」、「トランプ大統領の当選」、「イギリスのEU離脱」を予言したことで知られるフランスの歴史学者エマニュエル・トッドの理論が非常に面白いです。
世界の家族類型は大きく四つに分類され、各国のイデオロギーや少子高齢化にも大きな影響を与えているという壮大な理論です。
日本社会は、どうしてこうなっているのか、今後どうなるのかを考えるうえでも、非常に示唆に富む内容です。

まとめ
1.世界の家族類型は大きく四つに分類される
2.家族類型とイデオロギーには相関関係がある
3.識字率の上昇が歴史を動かす

結論
文明世界へのテイク・オフが先か、人口爆発による地球滅亡が先か微妙な情勢にある

1.世界の家族類型は大きく四つに分類される

エマニュエル・トッドによると、世界の家族類型は大きく四つに分類されるとのことです。親子が同居するか否か、兄弟関係が平等か否かで四つ(2×2)に分類されます。
絶対核家族(イングランド・アメリカ:親子別居・兄弟不平等)
結婚した子供は親と同居せず、別居して核家族を構成する。親の権威は強くはなく、子供は独立する傾向がある。兄弟間に平等意識はなく相続で争う傾向。教育には不熱心で、識字率は高くないが、女性の地位は比較的高く、女性識字率は比較的高い。
イデオロギー:自由主義、資本主義
平等主義核家族(フランス・スペイン:親子別居・兄弟平等)
結婚した子供は親と同居せず、別居して核家族を形成する。親の権威は強くはなく、子供は独立する傾向がある。兄弟間、特に遺産相続が平等である点が特徴的。識字率は低く、教育への関心も低め。女性の地位も他の類型対比低い。
イデオロギー:共和主義、大きな政府
直系家族(ドイツ・日本:親子同居·兄弟不平等)
結婚した子供の一人(長男が多い)と両親が同居するのが原則。親の権威は永続的で、親子関係も権威主義的。兄弟間は不平等で、財産は一人(長男が多い)に相続される。長男の嫁は長男と年齢が近い為に年齢が高く、識字率、特に女性の識字率が高く、教育熱心な傾向がある。
イデオロギー:自民族中心主義、社会民主主義
ファシズム外婚制共同体家族(ロシア・中国:親子同居・兄弟平等)
男子は結婚後も両親と同居する為、大家族。父親の権威は強く、兄弟たちは結婚後も権威に従う傾向。兄弟間は平等。女性の地位は低く、識字率も低い。
イデオロギー:共産主義、一党独裁型資本主義

2.家族類型とイデオロギーには相関関係がある

家族類型とイデオロギーは密接に関係しています。直系家族型である日本とドイツは確かに似ています。直系家族の特徴は一子相続(多くは長男)が原則ですが、跡取りは丁寧に教育されることから、教育熱心になります。農地と家という不動産と密接に結びついた家族類型です。農地が限られているので、一子相続で分散を防ぐ必要があったことが背景にあります。
両国とも、第二次世界大戦の敗戦国ですが、戦後はともに驚異的な復興を遂げた点も共通しています。背景には教育を重視する伝統があったと思われます。
また、父親の権威が大変強いのも特徴です。父親を頂点とする家の支配原理が影響し、世間による相互監視も強いです。特に日本社会では、同期、先輩、後輩にうるさいです。
一旦、独裁者が現れると直系家族は権力者の意をくむ忖度の習慣が強いので、ファシズムが発生する確度も高くなります。世界恐慌という災難がありましたが、両国ともファシズムに飲み込まれてしまいました。

3.識字率の上昇が歴史を動かす

エマニュエル・トッドは、男性の識字率が50%を超えると、社会変革や革命が起きると述べています。政治的文書が広く読まれ、イデオロギーが共有されるからです。実際、識字率の上昇と政情不安の時期は、相関関係が強いと言われます。
また、女性の識字率が50%を超えると出生率が下がると述べています。女性が内省するようになり、避妊の知識を得て受胎調節するようになるからです。
直系家族型である日本・ドイツ・韓国等は、教育熱心で女性の地位も比較的高い為、女性識字率の上昇が早く起こり、急激な少子化に突入しています。
サハラ以南のアフリカ諸国等では、女性の地位が低く、識字率の上昇も緩慢な為、人口爆発が続いています。
地球全体では、依然人口増加が続いていますが、人口爆発による環境破壊が先か、世界全体で女性識字率が50%を超え少子化に転じるのが先か微妙な情勢です。
また、日本についていえば、少子高齢化の進行で移民受け入れに踏み切った場合、どの家族類型の移民を受け入れるかで、国の形は大きく違ってくるでしょう。

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