世界幸福度とイースタリンのパラドックス

幸福

国連持続可能な開発ソリューションネットワーク(SDSN)から発表された2024年の世界の幸福度ランキングによると、全体で143の国・地域中、日本は第51位でした。
自分の国ではありますが、本当に日本は不思議な国です。世界屈指の経済大国であり、世界最大の対外純資産を持ち、平均寿命も世界トップレベルなのに、第51位の幸福度に甘んじています。幸福の定義はさておき、とても残念ではあります。

まとめ
1.幸福度の高い北欧の国々
2.所得が増えても幸福度は高くならない
3.国内での草の根の取組に期待

結論
幸福に向かって歩かなければ、幸福には辿り着かない。

1.幸福度の高い北欧の国々

世界の幸福度ランキングの説明変数は以下の6つから構成されています。
1.人口あたりGDP
2.社会的支援(ソーシャルサポート、困ったときに頼ることができる親戚や友人がいるか)
3.健康寿命
4.人生の選択の自由度(人生で何をするかの選択の自由に満足しているか)
5.寛容さ・気前の良さ(過去1か月の間にチャリティーなどに寄付をしたことがあるか)
6.腐敗の認識(不満・悲しみ・怒りの少なさ、社会・政府に腐敗が蔓延していないか)
2024年版の世界の幸福度ランキングは、1位がフィンランド、2位がデンマーク、3位がアイスランド、4位がスウェーデン、5位がイスラエル、6位がオランダ、7位がノルウェー、8位がルクセンブルク、9位がスイス、10位がオーストラリアで、北欧諸国の健闘が際立っています。
他の主要国では、15位がカナダ、20位がイギリス、23位がアメリカ、24位がドイツ、27位がフランス、41位がイタリア、51位が日本、52位が韓国、60位が中国、72位がロシア、126位がインドとなっています。
フィンランドはここ数年ずっと1位をキープしています。理由については様々云われていますが、コミュニティ意識が高く支え合う文化があること、税金は高いですが、教育や保健、社会保障が充実しており安心して生活できること、経済的な不平等が小さいこと、豊かな自然環境があること、柔軟なカリキュラムの教育システムがあること、ワークライフバランスが重視されていることが指摘されています。

2.所得が増えても幸福度は高くならない

経済成長によって一人あたりの所得が増えても、あるところを超えると幸福度は頭打ちになると云われています。この現象は提唱した米国の経済学者リチャード・イースタリンに因んで「イースタリンのパラドックス」(幸せのパラドックス)と呼ばれています。
日本は、平均すれば所得の高い国だと思いますが、格差は拡大傾向にあります。少子高齢化が急激に進み、単独世帯も増えコミュニティ意識も希薄化しています。
総合では51位ですが、30歳以下の幸福度ランキングが世界73位と低くなっています。現実や将来に対する根深い不安があるのだと思います。
フィンランドで実現できていることが、日本ではなかなか実現できていません。経済成長が幸福に繋がっていないのに、高度経済成長期と同様な思考回路では幸福に近づくことは難しいと思います。

3.国内での草の根の取組に期待

ブータンが「国民総幸福量」を国の指標にしているのは有名な話ですが、日本の地方自治体でも、同様の取り組みをしているところがあります。
東京の荒川区では、荒川区民総幸福度(グロスアラカワハッピネス:GAH)の向上に関する取り組みを進めています。
岩手県では、東日本大震災後、被災者一人ひとりの幸福追求権の保障を基本原則とし、「いわて県民計画」を策定して幸福度を重視した行政に取り組んでいます。
熊本県では、県民の総幸福量を測る指標としてAKH(アグリゲート・クマモト・ハピネス)を導入するなど、県民総幸福量の最大化を目標に据えています。
こうした動きは、経済成長一辺倒では幸福に辿り着かないことに多くの人々が気付き始めている証左だと思います。
この国が上から変わっていくとは考えにくいですが、地方自治体での草の根の取組によって、全国で切磋琢磨が起き、大きなムーブメントになることを期待したいです。
転職が普通になり、終身雇用を中心とする日本型雇用慣行も崩れつつあります。社命により転居を強いられるくらいなら、転職して過ごしやすい地方自治体に留まり続けるという選択もしやすくなるでしょう。
人々の「足による投票」によって、地方の幸福度向上が促されるといいですね。

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