文学

哲学

「夜と霧」とテヘランの死神

「夜と霧」は、神経科医で心理学者のヴィクトール・フランクルによって書かれた著作です。ユダヤ人であるフランクル自身が、アウシュヴィッツを含むナチスの強制収容所での経験を基に著した本であり、極限状態での人間の精神と生きる意味について深く掘り下げ...
文学

「地獄の黙示録」とコンゴ自由国

1979年のフランシス・フォード・コッポラ監督の映画「地獄の黙示録」は、ベトナム戦争を舞台にしたアメリカ映画ですが、原作があります。原作はイギリス人小説家ジョゼフ・コンラッドの「闇の奥」ですが、実は舞台はベトナムではなくアフリカのコンゴです...
哲学

非風非幡

禅の公案の一つに「非風非幡」というものがあります。「風に非ず、幡(はた)に非ず」と読むようです。禅宗六祖・芸能禅師が、中国の広州を旅していたころ、とあるお寺で説法が行われていました。当時は、説法の日には旗を立てる習慣があり、その風になびいて...
哲学

人間と動物の間(バタイユ)

人間には他の動物には無い幾つかの特徴があります。キーワードは「労働」「死」「性活動」です。例えば以下のようなものがあります。・労働を行う。・死者を埋葬する。・性活動に恥じらいを感じ、性器を隠す為のパンツを穿く。毎日会社に通勤する動物はいませ...
文学

「沈黙の春」と生物多様性

大ベストセラーSF小説「三体」については、Netflixで実写版が制作されましたので、早速視聴してみました。非常に面白かったのですが、作品のなかでレイチェル・カーソンの「沈黙の春」が度々引用されていたのが印象的でした。「沈黙の春」は、人類が...
哲学

太宰治と浦島太郎

「浦島太郎」は、日本で最もよく知られた物語です。浦島太郎は苛められている亀を助けたところ、お礼に竜宮城に連れて行かれます。竜宮城では美しい乙姫にもてなされ、豪華なごちそうや音楽とともに楽しい日々を過ごします。しばらくたって母親のことが心配に...
孤独

今そこにある不幸とラ・ロシュフコー

いつもスマホに入れて持ち歩いているラ・ロシュフコーの「箴言集」にぐっとくる箴言がありました。「自分に与えられた知性は、これから起こるかもしれない不幸を予見することにではなく、今起こっている不幸に耐えることに使った方がよい。」人間の脳というも...
文学

ジョージ・オーウェルの動物農場

ディストビア小説の金字塔「1984年」の著者であるジョージ・オーウェルは、「動物農場」という作品も書いています。ソビエト連邦の歴史とスターリン体制を風刺した小説として有名です。米ソ冷戦時に、CIAは「エイディノソー作戦」と称して、この小説の...
哲学

美徳とは偽装された悪徳(ラ・ロシュフコー)

フランソワ・ド・ラ・ロシュフローは17世紀フランスのモラリストです。有名な「箴言集」を執筆しましたが、人間の自己愛や偽善を鋭く描き出しており、鋭敏な洞察力と辛辣な皮肉に満ちていて非常に面白いです。ラ・ロシュフコーは、名門貴族の生まれであり、...
哲学

河童と反出生主義

芥川龍之介の作品に「河童」があります。主人公が山登りの最中に河童を見つけ、追いかけるうちに河童の国に迷い込むという内容です。人間世界とは全く異なる価値観が描写されていますが、そのなかに河童の出産についてのシーンが登場します。とある河童が妻の...