緑の黄金・アボカド

生物

大人気の美容・健康フードとして、サラダやグラタンなどさまざまなレシピで楽しまれるアボカド。
アボカドが注目され始めたきっかけは、1997年にアメリカがメキシコ産アボカドの輸入を解禁したことだったと言われています。これにより、急速にアメリカ市場で人気の食材となり、健康志向のモメンタムやオーガニック・ブームを背景に一気に普及しました。
アボカド・ブームは消費量世界一のアメリカからヨーロッパ諸国や中国など各地に広がっており、日本でも人気になっています。
一方で、主要な生産国であるメキシコでは大変なことが起きているようです。

まとめ
1.複数の異名を持つアボカド
2.アボカド生産国のメキシコで起きていること
3.先進国の生活スタイルが途上国の生活と環境を破壊する

結論
グローバルに合成の誤謬が起きている。

1.複数の異名を持つアボカド

アボカドには複数の異名があります。「森のバター」「緑の黄金」そして「悪魔の果実」。
「森のバター」は、アボカドが10種類以上のビタミンを含む一方、果肉の約20%が脂肪であることに由来しています。
「緑の黄金」は、主要生産国メキシコがアボカドの輸出によって大きな収益を上げており、地元経済にとって非常に重要な役割を果たしていることに由来しています。問題は「悪魔の果実」です。健康や美容を意識した先進国を中心とした豊かな国の過剰な消費は、産地の人々の安心や安全を脅かしています。一体何が起きているのでしょうか。

2.アボカド生産国のメキシコで起きていること

主要な生産地であるメキシコのミチョアカン州では、アボカド人気によって、多くの畑がアボカド栽培に切り替えられていきました。
アボカド栽培が始まる前、この一帯は産業がほとんどない極貧地域とされていて、火山灰を多く含むやせた土壌だった為、穀物や野菜は殆ど育ちませんでした。然しながら火山灰による水はけの良さ、高温多雨の気候はアボカド栽培には理想的な環境であった為、生産が急拡大していきます。地域に収益と雇用がもたらされました。
ところが、麻薬カルテルが薬物に代わる新たな資金源として、アボカドに目をつけます。
農家を脅して売上の一部を巻き上げたり、農園自体を乗っ取ったりという犯罪行為が各地で横行し、街の治安が悪化しました。誘拐や殺人も頻発します。
また、トウモロコシ畑が一気にアボカド畑にオセロの如く置き換わっていきましたが、トウモロコシ畑がなくなると、今度は自然林を違法に切り開く人たちが現れました。
また、アボカドは大量の水を吸い上げますので、栽培に大量の水を必要とします。一部の地域ではアボカド農家が栽培用の水を確保するため、付近の小川や井戸から違法に水をくみ上げ、巨大な溜池を作ってしまうケースが増加し、川の源流が枯れ、飲料水や家畜用の水も枯渇する事態に発展しました。

3.先進国の生活スタイルが途上国の生活と環境を破壊する

先進国の生活スタイルが生産国に多くの負担を押しつけており、環境破壊にも繋がっています。世界中の大企業が地球温暖化対策の為にカーボン・ニュートラルの目標を掲げていますが、先進国の生活スタイルが変わらない限り、森林伐採等の環境破壊は続きます。
アボカドは一例に過ぎません。ブラジルにおける牛肉や大豆、東南アジアにおけるパーム油の生産にも同様な事態が発生していると言われます。
一番の問題は、先進国の人々も、発展途上国の人々も各自の生活にとって最適の行動をとっているだけだということです。
先進国の人々は、安くて健康的な食材を食べたいと思っているだけですし、発展途上国の人々も所得を増やし生活を少しでも改善しようとしているだけです。
仮に地球環境に対して意識の高い生産国がアボカドの輸出を禁止しても、他の生産国に利益を奪われるだけです。先進国が輸入を禁止しても、別の国が輸入します。
全ての人々が自分にとって個別最適な行動をとる結果、地球環境の破壊は更に進んでしまいます。全体最適にはなりません。合成の誤謬とも言えます。
地球上の国家が全て統一されない限り、人類一丸となった全体最適な行動をとるのは無理かもしれません。国連は存在しますが、安保理の常任理事国が自ら戦争を起こすような状況では何も期待できません。
人類滅亡の危機に瀕するような危機バネが効かない限り、一枚岩になれそうにありません。

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