アロンソンの不貞の法則

バイアス

「アロンソンの不貞の法則」とは、アメリカの社会心理学者エリオット・アロンソンが考案した法則で、親しい人に褒められるよりも、新しく出会った人や、親しくない人から褒められる方が人の心に響きやすいという法則のことです。
親兄弟の様な親しい人から褒められるよりも、特段親しくもなく仕事上の付き合いしかない人から、突然褒められた方が何だか嬉しいということはよくあります。多くの人にとって納得感のある法則ではないでしょうか。
何故、「不貞の法則」なのかというと、この法則を悪用して意図的に相手を褒めることで、自分の事を好きにさせ、人たらしになることが出来るからです。

まとめ
1.内集団バイアスと承認欲求
2.ウィンザー効果とアロンソンの不貞の法則
3.バンドワゴン効果とハロー効果

結論
人間はどうしようもなく承認欲求の奴隷。

1.内集団バイアスと承認欲求

そもそもですが、親しい人に褒められるよりも、親しくない人から褒められる方が嬉しいのはどうしてでしょうか。
人間には内集団バイアスがあります。自分が属する集団(内集団)に対して肯定的な偏見を持ち、他の集団(外集団)に対しては否定的な偏見を持つ心理的傾向のことです。自分の親族や地元など、自分に近ければ近い程肩入れしたくなります。高校野球では地元チームを応援しますし、オリンピックでは自分の国を応援してしまいます。
人間は、特に根拠が無くても親しい人は味方してくれることを直感的に分かっています。従って親しい人からの賞賛は根拠に客観性を欠き、身贔屓であると感じてしまいます。
逆に言えば、親しくない人からの賛辞には客観的根拠があると考える傾向があるということです。実際に根拠があるかどうかは関係ありません。
人間には抗しがたい承認欲求がありますが、より客観的で確かな承認を沢山求めてしまいます。SNSの「いいね!」の数に拘るのは、それが親しくもない人からの承認だからです。

2.ウィンザー効果とアロンソンの不貞の法則

「アロンソンの不貞の法則」と類似したものに、「ウィンザー効果」があります。第三者から間接的に賞賛を伝えることで、信憑性や客観性が増して納得感が増すという効果です。
例えば、会社で同僚の社員から「社長がお前の作った資料のこと褒めていたぞ」と聞くと、社長から直に聞くよりも嬉しく感じます。社長から直接言われた場合には、本人へのリップサービスである可能性がありますが、第三者から聞いた場合には、心から賞賛している可能性が高いと考えてしまうからです。
実際には、社長が人たらしで意図的に第三者を介して伝えている可能性もあります。カリスマ的なトップには人たらしが多いです。歴史上では、豊臣秀吉や田中角栄が有名な人たらしです。そういう人はウィンザー効果のことも熟知しています。
尚、ウィンザー効果ですが、アメリカ人作家アーリーン・ロマノネスによる著書「伯爵夫人はスパイ」において、登場人物のウィンザー伯爵夫人が「第三者の褒め言葉が何よりも効果的」と言ったことに由来しています。

3.バンドワゴン効果とハロー効果

それにしても、第三者経由の賞賛や親しくもない人からの賞賛を求め、客観性のある確かな賞賛に喜びを感じてしまう人間の脳とは一体何なのでしょうか。
それには「バンドワゴン効果」や「ハロー効果」が関係しているかも知れません。
「バンドワゴン効果」とは、多くの人が支持しているものに対して、より多くの支持が集まることを指します。「バンドワゴン」は「パレードの先頭を行く楽隊車」を意味しています。多くの人から承認されると、あとは勝手に承認してくれる人が増加していきます。
「ハロー効果」とは、ある対象を評価するとき、特徴的な印象に引きずられて、全体の評価をしてしまう効果のことです。ハローとは聖人の頭部の背後などに描かれる光輪や後光などを意味します。一度、周囲からの賞賛を集めると、ハローの印象に引きずられて更に支持が集まり、然したる根拠なく承認してくれる人が増えていきます。
人間はどうしようもなく承認欲求の奴隷であり、一度多くの承認が得られれば、更に多くの承認が得られることにメリットを感じてしまいます。
旧石器時代は食料供給が安定せず、人類はチームワークによる狩猟採集で生きていました。一人でマンモスは倒せませんし、集団からの追放は死を意味しました。孤独に対する極度の恐怖感が、我々の遺伝子に深く刻み込まれ、社会性の高い個体が生き延びました。我々はそうした人々の子孫であり、常に承認されていないと不安を感じるように設計されています。逆に言えば、承認されると喜びを感じるようにも設計されています。
現代社会では、それ程社会性が高くなくても生活はできます。通貨があれば何でも買えるからです。過剰な承認は不要です。無限に承認を求める必要はありません。

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