暴飲暴食は健康にとって良くないことは誰でも分かっています。
カロリーの過剰摂取は特に生活習慣病発症(がん、心臓病、脳卒中、糖尿病等)のリスクを高めることが知られています。
つまり過度な食欲が死因に繋がっている訳ですが、なかなか止められません。死への道程が長すぎるからです。毎日少しずつ死んでいる状態です。フグの毒のように即効性があれば、どんなに美味しくても誰も食べません。
旺盛な食欲は、適者生存を原理とする進化の結果であるはずですが、どうして死ぬ程暴飲暴食してしまうのでしょうか?
1.旧石器時代の人類にとって飢餓状態がデフォルト
農耕開始以前、旧石器時代の人類は、少人数の集団で狩猟採集を行ない、不安定な自然物の獲得に頼っていた為、飢餓の恐怖に悩まされ続けていました。
飢餓状態でも生き延びるように最適化された為、食事にありつけた際には徹底的に食べ、体内にカロリーを脂肪として備蓄し、次の食事迄にカロリー消費を極力セーブするような進化を遂げました。
つまり、殆どの時代を狩猟採集で暮らしてきた人類にとっては、飢餓状態が寧ろデフォルトという訳です。
北極圏で生活するイヌイットの人々は、元々狩猟採集生活をしながら肉と魚だけを食べていましたが、白人との交易が始まって小麦粉と砂糖を食べるようになってから、急激に肥満や糖尿病を患うようになったそうです。
2.農業革命を経て食物連鎖の頂点に立った人類の進化は停滞
農業革命を経て食物連鎖の頂点に立った人類は、適者生存を促す外敵からの脅威を克服した結果、自然淘汰は緩慢となり、進化は停滞するようになったはずです。
毎日猛獣に襲われるようなデンジャラスな環境では、戦闘能力が高いか逃げ足の速い個体しか生き残れませんが、環濠に囲まれた農耕社会では誰でも生き延びることができるので、進化圧が低くなります。
つまり人類は狩猟採集時代の飢餓に最適化された遺伝子を維持したまま、文明が発展したことで現代の大量消費社会を実現し、飽食を満喫している状態にあります。
3.人類は飽食時代に対応できておらず本能に従って暴飲暴食
ホモ・サピエンスは30万年前から20万年前にかけて、アフリカで誕生したとされていますが、農業の起源は今から約1万年前といわれています。
殆どの時代を狩猟採集で生き延びてきたので、飽食時代に最適化する迄は未だ進化できていません。
本格的に生活習慣病になるのは、大体40代以降なので、暴飲暴食しやすい遺伝子を持った人類でも若い頃の生殖によって子孫は残せます。飽食時代に最適化されるような適者生存はなかなか進みません。
従って、旺盛な食欲という本能と戦い続けるのは人類の宿命です。
アンガーマネジメント同様、本能を抑え込むのは理性しかありません。各自が前頭前野を鍛えるしかなさそうです。
然しながら、安きに流れるのが人間の常であり、脳は基本的に怠け者です。
理性で欲望を抑えられない場合は、習慣化で乗り切るしかありません。
習慣化に成功すると、多少面倒なことでも意外と出来てしまいます。
例えば歯磨き。面倒くさいですが毎日やってしまいます。また、私はアップルウォッチでムーブ・エクササイズ・スタンドを管理していますが、達成できないと何となく気持ち悪いので、ついつい運動してしまいます。無理のないノルマにするのがポイントです。
私は40代に入ってから心臓病になってしまいました。それを機に「一日一食」を始めてみました。最初の数ヶ月は食欲に敗北する日々が続きましたが、今は確りと定着しました。体調もすこぶる良いです。仕事もはかどるようになりました。食べなくても頭はちゃんと働きます。そもそも三食ではカロリー過多だから太るのです。
以前は、毎日三食確りとっていましたが、空腹でもないのに漫然と食べていました。よく考えてみると、これも習慣に過ぎません。日本でも一日三食になったのは、江戸時代からだそうです。一日一食を始めてみようと思ったきっかけは、大隅博士が「オートファジー」でノーベル賞を受賞したことでした。
オートファジーは細胞内のタンパク質を分解し、新陳代謝などを行うリサイクルシステムです。
これにより、細胞内のダメージを修復し、体が若返り健康寿命を維持することができます。
オートファジーは、16時間以上の空腹時間を作ることで活性化するそうです。
旧石器時代の人類は、飢餓状態がデフォルトでしたので、空腹により軽い飢餓状態になることで、体を防衛するオートファジー機能が発動するように進化したのでしょう。
いまでは一日一食の習慣化に成功し、空腹でお腹が鳴るとオートファジーが発動したように感じて寧ろ嬉しくなります。
但し、一日一回の食事については、好きなものを食べるようにしています。ストイック過ぎると続かないので、自分へのご褒美もあった方がいいですね。