類人猿とヒトと平和

歴史

私も含めて殆どの方は、チンパンジーとボノボの区別がつかないと思います。何れもヒトに最も近い類人猿と云われていますが、ボノボとチンパンジーの共通祖先とヒトの祖先は600万~700万年前に分かれ、100万~200万年前にボノボとチンパンジーの祖先が分かれたそうです。
チンパンジーもボノボもアフリカ中央部の赤道付近に生息していますが、ボノボはコンゴ川の南側のコンゴ盆地周辺だけに生息しており、チンパンジーとは分布域を分けています。
ヒト同様、ボノボもチンパンジーも集団社会生活を営んでいますが、ボノボの集団社会が平和的なのに対して、チンパンジーは好戦的だそうです。
何が両者を分けたのでしょうか?

まとめ
1.ボノボとチンパンジーの違い
2.オスとメスのバランスと戦争
3.格差拡大による影響

結論
格差拡大で人類はますます好戦的になる。

1.ボノボとチンパンジーの違い

ボノボの生息域は、コンゴ川の南側のコンゴ盆地です。この大河を渡るのは容易ではありませんが、遥か昔、後にボノボとなる一部の集団が渡河に成功し、チンパンジーから分化しました。コンゴ川に隔てられているものの、熱帯雨林に生息している点においては環境に然したる違いはありませんが、チンパンジーとボノボでは繁殖戦略が微妙に乖離していきました。
チンパンジーのメスは妊娠し出産して子どもが離乳するまで発情しません。一旦子どもを産むと離乳期までの3年半〜4年程度排卵が止まります。従って、メスが交尾可能な期間は非常に短くなります。一方、ボノボのメスは出産から1年もたたずに発情が再開し交尾します。妊娠の可能性がないニセ発情とも呼ばれる状態も存在するので、交尾可能な期間がチンパンジーよりも格段に長いそうです。実はこのことが両者に決定的な違いをもたらしました。

2.オスとメスのバランスと戦争

チンパンジーのメスは交尾可能な期間が非常に短く、ボノボのメスは交尾可能な期間が非常に長いことで、オスとメスのバランスに大きな差異が生じました。
チンパンジーは交尾可能なメスが極端に少ない為、メスを占有する為にオスの間で過酷な競争が起こります。オスによる集団内での殺し合い、集団間の殺し合いがよく見られます。従って好戦的で強いオスが有利になります。
一方でボノボは交尾可能なメスが常に複数いますので、オスの競争は比較的穏やかなものになります。オス1頭がメスたちを独占するのは無理ですから、チンパンジーと比べると他のオスにも交尾するチャンスが増えます。メスを力で独占することは意味がありません。メス同士の協力関係もありメスの社会的地位が高いのが特徴です。元々同じ種でしたが、オスとメスのバランスの違いが、好戦的か平和的かを決定づけました。
それでは、我々ヒトはどうなったのでしょうか。
ヒトはボノボの様に発情を長期化するのではなく、それを完全に隠す方向に進化しました。その結果、性活動がいつでも可能となった為、オスとメスのバランスはほぼ一対一となり、性活動は生理的というよりは寧ろ心理的になりました。心理として排他的な愛情を進化させ、オスとメスがペアを作り相手を固定することで、育児にオスを参加させ子の生存確率を高める戦略をとった訳です。類人猿と異なり、排他的で執着の強い愛情を持った為、浮気や不倫を許さない道徳が誕生します。
ボノボと比較してもオスとメスのバランスはかなり改善した筈ですが、排他的な愛情を持った為に相手への独占欲が強くなります。乱婚とは一線を画す厳格なマッチングにより相手を固定化することで、却って競争は激化します。もてたいという承認欲求の奴隷となり、ときに愛憎が渦巻く闘争も起こします。実はボノボやチンパンジーよりも好戦的なのかも知れません。

3.格差拡大による影響

資本主義を背景とした過酷なメリトクラシーを背景に、世界中で格差が拡大しています。中国では若者の間に「寝そべり族」という社会現象が起きています。「六不主義」をとる生き方をする人々です。即ち「家を買わない」「車を買わない」「結婚しない」「子供を作らない」「消費しない」「頑張らない」ということです。また、韓国では「三放世代」と呼ばれる若者たちが、「恋愛」「結婚」「出産」を諦める傾向が顕著になっています。
これらの若者たちは、比較的平和的な方々だと思います。少なくとも好戦的とは思えません。平和的な若者たちが恋愛・結婚・出産を諦めていった先には、利己的で好戦的な遺伝子だけが純度を高めていく未来予想図が見えてきます。格差拡大によって生存と繁殖という進化圧自体が変化しているのかも知れません。平和を希求する人々の比率が趨勢的に減少したら、人類は地球温暖化の前に戦争で滅ぶかも知れません。

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