「根本的な帰属の誤り」とハリポタのマルフォイ

バイアス

「根本的な帰属の誤り」とは、認知バイアスの一種で、人々が他者の行動を説明する際に、その人の性格や意図などの内的要因を過剰に重視し、状況や外的要因を軽視する傾向を指します。具体例を挙げると以下があります。
遅刻:人が遅刻したとき、その人の怠惰な性格が原因と判断しがちであるが、実際には交通渋滞などの外的要因が原因である可能性がある。
仕事上のミス:ミスをした人が不注意で無能だと判断しがちであるが、上司の指示ミスや予期せぬエラー、体調不良等の外部要因は考慮されない。
社会生活を営んでいれば、よくある話ではあります。

まとめ
1.自分には甘く他人には厳しい人間
2.ハリポタのマルフォイと日本人
3.脳は本当に怠け者

結論
自分の脳も他人の脳も、基本的に怠け者と思って最適な行動をとる。

1.自分には甘く他人には厳しい人間

「根本的な帰属の誤り」は、他人のネガティブな行動を説明するとき、当人の性格や行動に焦点を当てすぎて、状況的な要因を過小評価する傾向でしたが、自分についてはどうでしょうか。
自分については、「自己奉仕バイアス」というものがあります。要するに成功したときは自分の能力、失敗したときは外部要因といったように、自身に好意的な認識を持ちやすい傾向のことです。
総括すると、「人間は自分には甘く他人には厳しい」ということです。私も自覚しています。

2.ハリポタのマルフォイと日本人

遅刻や仕事上のミス程度のことについては、自分に実績と信用が無かったことも一因と素直に反省すべき場合もありますが、そうでない場合もあります。
映画「ハリーポッター」シリーズで、悪役ドラコ・マルフォイ役を演じたトム・フェルトン氏は、映画の大ヒットに伴って世界中からの誹謗中傷に苦しみ続けたそうです。SNS上で脅迫や嫌がらせを受けたり、子供達から「ハリーを虐めるな」と石を投げられたりしたこともあったそうです。精神的ストレスからアルコール依存症になったことも告白しています。
どうして人間はこんな仕打ちをしてしまうのでしょうか。俳優自身とその人が演じた役割が混同される現象は、「キャラクターの同一視」と呼ばれます。この現象は、「根本的な帰属の誤り」の一種と見なすことができ、視聴者が俳優の演技を内的要因である俳優の性格に帰属させ、役を演じるという状況や外的要因を軽視することによって生じます。
恐ろしいことです。トム・フェルトン氏は自分の役を立派に演じたのであり、それは称えることであっても、誹謗することではないからです。
トム・フェルトン氏は、2009年に初めて日本を訪れた際、日本のファンからの熱烈な歓迎に感動し、以来親日家になったそうです。東日本大震災では、積極的にチャリティー活動をされたそうです。有難いことです。
多くの日本人は、映画と現実の違いを確りと理解し彼に喝采を送りました。誇るべきことだと思います。

3.脳は本当に怠け者

時に甚大な悲劇を生む「根本的な帰属の誤り」ですが、映画と現実の区別も出来なくなるようなこのバイアスは何故起きるのでしょうか。
一言でいえば、他者の行動は目に見えますが、その背後にある状況や環境は直接観察できない為、行動を説明する際に内的要因に頼りがちだということです。人は認知的な負荷を軽減する為、分かりやすいものを安易に原因にしてしまいます。つまり真因分析を怠ることです。脳は本当に怠け者なので、直感に頼ってしまいます。
人間は、基本的に自分には甘く他人には厳しいですし、それは自分の脳も他人の脳も、基本的に怠け者であることに起因します。真因を探ろうとせず、お互いに相手に対して厳しい判断をします。大宗の人はそうです。
しかしながら、そこがチャンスでもあります。自分だけが相手の行動の真因を理解し、それに応じた判断をすれば、相手の信頼を得られるからです。見事な演技故に世界から誹謗中傷を受けたマルフォイ役のトム・フェルトン氏を、日本人が確りと理解し受け容れた様にです。
脳が怠け者だということを自覚しているかが大事です。他人の脳も怠け者で、「根本的な帰属の誤り」を犯しかねないと思った時には、面倒でも且つ演技でも最適な行動をとった方が後で楽です。
人間は、自分には甘く他人には厳しいので、相互理解の為には最低限のコストは負担しないといけません。

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