コアラとクラゲと人間

哲学

コアラの脳はその体の大きさに対して非常に小さく、脳はその頭蓋骨の中で浮いている状態で、且つ形状が非常に単純であるそうです。また、クラゲには脳がないそうです。
人類は進化の過程で、脳を発達させてきました。社会的動物として集団を形成し、道具を操り、言語を発明して緊密な連携をとることで、地球の霊長として君臨しています。
コアラは絶滅危惧種に指定されておりますが、コアラやクラゲも厳しい環境を潜り抜け、現在まで生き延びてきたことに関しては人間と同じです。
樹上でのんびり生活するコアラ、海でふわふわと漂っているクラゲ、一見すると無気力に感じられますが、どうやって生き延びてきたのでしょうか。

まとめ
1.コアラの脳は非常に小さい
2.クラゲには脳がない
3.コアラとクラグは人間と逆の進化をした

結論
巨大な脳を持った人間に生まれたことは、実は不幸なのかも知れない。

1.コアラの脳は非常に小さい

コアラは一日の大部分を眠って過ごします。その睡眠時間は一日に約18時間から22時間と言われています。コアラが主食とするユーカリの葉は栄養価が低く、消化にエネルギーを大量に必要とする為です。エネルギー消費を抑えるために、コアラは大部分の時間を眠って過ごす訳です。
また、ユーカリには毒性があります。コアラがユーカリを食べることができるのは、その体がユーカリの毒素を分解する能力を持っているからです。コアラの体内にはユーカリの毒を分解する酵素があります。
このような食生活を続けるためには、エネルギー消費を最小限に抑える必要があります。脳は体の中でも特にエネルギーを消費する部位であるため、コアラの脳はエネルギー消費を抑えるために小さくなったと考えられています。ユーカリの葉は毒素を含んでおり、多くの動物にとっては食べられない植物です。他の動物が寄り付かない植物を食べる能力によって、生き延びてきた訳です。
因みに、人間の脳は非常に多くのエネルギーを消費する臓器です。体重の約2%しかないにも関わらず、体全体のエネルギーの約20%を消費します。人間の主食がユーカリであれば、とても浪費家の脳を養うことは出来ません。
人間は火を使うことで食物を調理し、消化に要するエネルギーを大幅に削減しました。火を使うことで、食物の組織が壊れやすくなり、消化が容易になります。また、火を使って調理することで食物中の病原体や寄生虫を減らすことができました。
これにより、エネルギーを他の活動や脳の発達に使うことができました。

2.クラゲには脳がない

クラゲは、その進化の過程で脳を必要としない生物として発展してきました。神経系を持っていますが、これは中央集権的な脳によって制御されるのではなく、分散型の神経ネットワークとして機能しています。
この分散型の神経ネットワークは、クラゲが環境の変化に対応し、餌を探し、捕食者から逃れるなどの基本的な行動をとるのに十分な機能を有しています。
基本的に海を漂っているだけですが、触手にある刺胞と呼ばれる特殊な細胞を使って獲物を捕らえます。刺胞は獲物に触れると毒針を発射し、毒を注入します。この毒により獲物は麻痺し、獲物を口へと運びます。
基本的に刺激に対して反応しているだけで生存出来ており、体の約95%が水で出来ていますので、心臓も脳も必要ありません。エネルギー消費を最小限に抑えることができます。
進化の歴史の中でいろんな遺伝子を獲得してきたため、生き方の柔軟性が高く、世界の海に分布しています。

3.コアラとクラグは人間と逆の進化をした

コアラとクラゲは、その進化の過程において、エネルギー効率の悪い脳を捨てる戦略をとってきました。人類とは真逆の戦略です。
人類は、屈強とは言い難い体躯であり、チームワークで勝ち残ってきました。集団を形成する為には、構成メンバーの細かい特徴を把握しなければなりません。社会的複雑性は大きな脳を必要とします。脳が巨大化すると、未熟な状態でしか誕生できません。脳がデカすぎて産道を通れないからです。集団内に未熟な子供がいると相互扶助が必要となります。社会はより複雑化し、脳は更に巨大化します。火を使い、道具や言語を発明し、農業革命・産業革命を経て地球を制覇し、人口は激増しました。
脳の拡大志向は止まるところを知らず、地球の環境を破壊するところまで来ています。社会的複雑性は、他の生物には無い多種多様な感情を生み、多大なる苦痛の原因となっています。精神病は巨大な脳の宿命です。
承認欲求に苛まれるコアラや絶望するクラゲは存在しません。巨大な脳を持った人間に生まれたことは、実は不幸なのかも知れません。巨大な脳は大量のエネルギーを必要とする宿命にあり、拡大志向もビルトインされています。拡大志向はサステナブルな世界を作れません。
ジョン・スチュアート・ミルは、「満足した豚であるよりも不満を抱えた人間の方がよく、満足した愚か者よりも不満を抱えたソクラテスの方がよい。」と述べました。
不満を抱えた人間が地球にとってサステナブルであれば良いのですが、人新生は脳の自滅で終焉を迎えるかもしれません。

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