名誉白人と名誉マーレ人

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かつて南アフリカ共和国で実施されていたアパルトヘイト(人種隔離政策)の下では、外国人を含めて、有色人種は総じて差別的な扱いを受けてきました。ガンディーは同国で弁護士をしていましたが、差別を受けたことで覚醒し、後にインド独立運動を指揮しました。
一方で日本人は南アフリカ共和国で「名誉白人」とされていました。
大ヒットアニメ「進撃の巨人」では、エルディア人は巨人の脊髄液を摂取することで巨人になる力を持つ人種であり、他民族からは「穢れた血」「悪魔の末裔」などと呼ばれ、世界中で差別の対象となっていました。マーレ国内にいるエルディア人も差別されていましたが、マーレ国が保有する7つの巨人の力のうちどれかを継承したエルディア人とその家族には、「名誉マーレ人」の称号が与えられていました。
日本人とエルディア人、「名誉人種」の共通項は何でしょうか。

まとめ
1.日本人はアパルトヘイトでは名誉白人扱い
2.日本人はナチスドイツでは名誉的アーリア人扱い
3.日本人は戦時下のアメリカではドイツ人以上に適性外国人扱い

結論
日本人は経済力によって差別を免れていただけ。

1.日本人はアパルトヘイトでは名誉白人扱い

日本人が「名誉白人」とされたのは、1961年です。
当時、欧米諸国は、アパルトヘイトを続ける南アフリカとの経済関係を人道的理由により縮小していましたが、逆に日本は同国との貿易を拡大し、後に南アフリカ共和国の最大の貿易相手国になっています。つまり、日本人が「名誉白人」とされたのは、完全に経済的理由です。
日本人だけでなく、国際的に孤立していた南アフリカと数少ない国交を持っていた台湾人は白人として扱われましたし、香港からの華僑と華人も名誉白人として扱われました。

2.日本人はナチスドイツでは名誉的アーリア人扱い

日本人が「名誉人種」とされたのは、南アフリカだけではありません。
第二次世界大戦時、ナチスドイツは「アーリア人種」を最上位に位置づける人種政策を掲げ、それ以外の人種、特にユダヤ人を差別し迫害しました。ホロコースト(ユダヤ人大虐殺)で無数の人間の生命と尊厳を奪う結果となりました。
しかし、この人種政策の中で日本人は「名誉的アーリア人」とされ、差別や迫害の対象からは外されていました。ナチスドイツと日本が枢軸国として同盟関係にあったからです。
「名誉白人」や「名誉マーレ人」と構造は同じです。役に立つ人種は「名誉人種」として処遇する。それだけです。

3.日本人は戦時下のアメリカではドイツ人以上に適性外国人扱い

同盟国のナチスドイツと敵国のアメリカでは、日本人の扱いは当然異なります。第二次世界大戦中、アメリカでは、主に日本人と日系アメリカ人が大規模な強制収容をされましたが、ドイツ人やイタリア人、ドイツ系およびイタリア系のアメリカ人も一部、収容されました。
但し、これらドイツ系やイタリア系のアメリカ人の収容は、日系アメリカ人の収容と比べて規模が小さく、選択的であったとされています。また、彼らが収容されたのは主に個々の敵性が疑われた場合であり、日系人のような集団的な強制収容は行われませんでした。
日本人はドイツ人以上に敵性外国人扱いをされたことになります。「名誉白人」、「名誉的アーリア人」、「敵性外国人」、何れも20世紀の日本人に与えられた称号です。
「名誉人種」とは差別に被せられたメッキの如き言葉です。帝国主義の時代、列強といえば欧米の国でした。日本はその一角に割って入り、戦後も先進国の地位を確保します。しかしながら、差別がなくなった訳ではありません。日本人は経済力によって差別を免れていただけです。
残念ながら現実世界での差別はなくならないでしょう。人間の集団は、仮想敵を作ることでしか結束できないからです。
人間は自分を中心としてベン図のように集団を形成していきます。家族、会社、学校、市町村、都道府県、国家、民族、人種、世界のように抽象度は変化します。
人類全体が地球人という抽象度で世界を捉えた場合、戦争はなくなります。
世界で初めてそれに気付いたのは、恐らく中国戦国時代の墨子だと思います。墨子を始祖とする墨家は、「兼愛」、「非攻」を説きました。「兼愛」とは、自他を区別なく、また身分や血緑にかかわらず、平等にすべての人を愛さなければならないという教えです。
例えば、タイタニック号が転覆した場合、親兄弟よりも近くの人を先ず救助するのが兼愛です。儒教では親を真っ先に救助します。孝を重視するからです。兼愛ではなく偏愛です。
もし宇宙人が地球に攻めてきたら、我々は日本人から地球人になります。巨大な仮想敵が出現することで、人類の抽象度が上がるからです。地球人間の差別はなくなるかも知れませんが、宇宙人に対する差別が生まれます。

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