リリスとダイバーシティ

アニメ

アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」には、アダム等聖書に因んだ使途が登場しますが、リリスは、第2使徒と定義されており、人類の生みの親とされています。
旧約聖書「創世記」では、アダムが最初の人間であり、エヴァはアダムの肋骨から神によって創造されたとしています。リリスとは一体何者なのでしょうか。
旧約聖書では、リリスは「イザヤ書」にのみ言及されています。聖書以外の文献にも記載されている事項等を統合すると、リリスは最初の女であり、アダムの最初の妻とされ、アダムとリリスの交わりから悪霊たちが生まれたとされています。
また、リリスはアダムと平等に扱われるように主張し、アダムの元に帰ることを拒否したため、神はアダムの肋骨からエヴァを作り、アダムの後妻としたという伝承もあります。この通りだとすると、アダムはバツイチということになります。カトリックでは離婚を禁じているようですが。

まとめ
1.ダイバーシティは宗教に抑え込まれてきた
2.旧約聖書とデカルトにおける動物に対する雑な扱い
3.AIや異星人をどう扱うかの判断軸はない

結論
テクノロジーが加速度的に進化する世界では、多様化に倫理が追い付かなくなる。

1.ダイバーシティは宗教に抑え込まれてきた

旧約聖書では、アダムが最初の人間であり、エヴァはアダムの肋骨から神によって創造されたとしています。その後、アダムとエヴァは禁断の木の実を食べて神に背いた結果、楽園追放となり、人類の祖先となります。つまり、女性は男性の肋骨から創造されたことになり上下関係が生じています。
もし人類の祖先が、アダムとリリスだったらどうなるでしょうか。アダムとリリスはどちらも神によって創造されていますので、男女間の上下関係はありません。
ユダヤ教、キリスト教、イスラム教では、エヴァはアダムの肋骨から創造されたことになっています。この設定が男尊女卑に大きな影響を与えていることは想像に難くありません。
一部のフェミニズム運動では、リリスを象徴として取り上げることがあります。リリスはアダムの初めの妻とされ、彼に服従せず独立した存在として描かれている為、女性自立の象徴となっている訳です。
日本神話の最高神である天照大御神は女性とされており、邪馬台国の卑弥呼も女王ですので、男尊女卑が日本を起原とするようには思えません。儒教の影響かもしれません。

2.旧約聖書とデカルトにおける動物に対する雑な扱い

話は変わりますが、旧約聖書を読んでいて昔から疑問に思っていたことがあります。ノアの箱舟についてです。
旧約聖書によれば、当時の人間が邪悪であった為、神は大洪水を起こして人類を滅ぼす決断をしました。但しノアは正義の人であった為、神はノアに事前に警告を与え、すべての種類の動物をペアで箱舟に乗せるように指示しました。結果的にノアとその家族、そしてペアの動物たちは大洪水を生き延びることができました。
ノアとその家族は分かるのですが、ペアで選ばれた動物以外の大多数の動物は滅ぼす必要があったのでしょうか。何か罪を犯したのでしょうか。滅ぼし方が雑ではないでしょうか。
「我思う、故に我あり」でお馴染みの大哲学者デカルトは、動物は精神を持たず考える事も苦痛を感じる事もない為、動物に対してどんなに酷い扱いをしようが構わないと主張したそうです。デカルトは哲学に数学的論理を持ち込んだ合理主義者ですが、神の存在証明をしている位ですから神は信じていました。動物の扱いが雑なのも頷けます。
動物を殆どモノ同然に扱うところは、一神教的な価値観だと思います。動物、植物、樹木、滝、岩、月など、すべての自然物に霊魂的存在を認めるアニミズム信仰とは大きく異なります。また、三平方の定理で有名なギリシャの哲学者・数学者ピタゴラスは、輪廻転生を信じていた為、動物に敬意を払うように主張していました。来世は動物に生まれ変わるかもしれないからです。

3.AIや異星人をどう扱うかの判断軸はない

哲学者ニーチェは「神は死んだ」と述べましたが、フランス革命やキリスト教を否定する科学の進歩、産業革命による生産体制の変化は、これまで存在していた政治理念やキリスト教的倫理観を大きく揺らしました。一神教的価値観のくびきから逃れつつあります。
近代に入ってから、ダイバーシティや動物の権利についての議論が活性化したのも、そうした背景があると思います。
しかしながら、今後は更に真剣に議論しないといけなくなるかもしれません。旧約聖書に書いていないことが大量に起こっているし、より複雑になるからです。
・チューリング・テストに合格したAIは、人間として扱うのか、動物的に扱うのか。
・人型のヒューマノイドとサーバー内のプログラムであるAIをどう区別するのか。
・異星人に遭遇したら、倫理上どう扱うのか。
・捕鯨はダメだが、牛は食べて良いのは何故か。哺乳類はどこで線引きをするのか。
アニメ「シドニアの騎士」のように、人類が植物同様光合成を出来るようになり、また、男性でも女性でも両性具有でもなく、相手に合わせて性別が変化する「中性」と呼ばれる存在に進化したら、どのように整理するのか。動物と植物が不可分になったらどうするのか。
量子コンピュータ、AI、ロボティクス、ナノテクノロジー、バイオテクノロジー等、あらゆるテクノロジーが加速度的に融合しながら進化する世界では、テクノロジーによる多様化に倫理が追い付かない可能性があります。

関連記事
 鯨と豚の境界線 

タイトルとURLをコピーしました