ショック・ドクトリン

歴史

「ショック・ドクトリン」という言葉をご存知でしょうか。社会に壊滅的な惨事が発生した直後、人々が茫然自失している状態をチャンスととらえ巧妙に利用する政策手法のことです。
元々はカナダのジャーナリスト・作家であるナオミ・クラインが著した「ショック・ドクトリン:資本主義の台頭」で提唱した造語です。
ショック・ドクトリンの活用例は色々とありますが、必ず利権が絡んでいます。ジャーナリストの堤美香は、日本でもショック・ドクトリンはあったと主張しています。

まとめ
1.大きなショックは政策に利用される
2.反動は新自由主義的な政策となって顕在化することが多い
3.ショックによって格差は拡大する

結論
明治維新は日本最大のショック・ドクトリンかもしれない。

1.大きなショックは政策に利用される

ショック・ドクトリンの有名な例を挙げると以下の通りです。
チリの軍事クーデター
極めて高いインフレの状況下、1973年に米国から支援を受けたピノチェトがクーデターによって権力を掌握。シカゴ・ボーイズの提言を受入れ、規制緩和や民営化、政府支出の削減、中央銀行による金利の引上げ等、経済の自由化政策を推進。シカゴ・ボーイズとは、主にシカゴ大学で学んだ一群の経済学者たちを指す名称で、中心人物はミルトン・フリードマン。
米国同時多発テロ事件
2001年のアメリカ同時多発テロ事件の後、ジョージ・W・ブッシュ政権は「テロとの戦争」を宣言し、国内外での監視強化や、イラク戦争を始めるなど、大幅な政策変更を実施。
スマトラ沖地震
2004年のスマトラ沖大地震後、スリランカでは津波で壊滅的な被害を受けた海岸部の土地が、観光業者によって買収され、高級リゾートが建設された。
ハリケーン・カトリーナ
2005年に巨大ハリケーンによる大規模な自然災害が発生。多くの公立学校が被害にあったが、公立学校の復興ではなく、民間企業が経営する教育ビジネスが普及を推進。公立学校が急減し、貧困層の教育機会が失われた。
コロナ禍
非対面による感染拡大防止をお題目に、オンライン教育、デジタル教育が急激に普及。マイナンバー制度の開始、デジタル庁の発足、デジタル関連法案の成立と、政策が急激に進展。
他にも色々ありそうですが、政策に便乗して儲かったセクターも相当あると思います。

2.反動は新自由主義的な政策となって顕在化することが多い

クラインは、ショック・ドクトリンによって、「惨事便乗型資本主義」が蔓延ると述べています。前述した例をみても、市場原理主義の導入による経済改革や利益追求が、共通項と言えるかもしれません。
南米チリのクーデターの例がありましたが、似たような事例がアルゼンチンでも起こっています。2023年、アルゼンチンでは約32年ぶりという記録的なインフレがありましたが、その後の大統領選挙で、ハビエル・ミレイ氏が当選しました。彼はリバタリアン(自由至上主義者)と「無政府資本主義者」を自称し、公的助成金の大幅削減や各省庁の撤廃を公約として掲げています。
ハビエル・ミレイ氏の犬の名前は、コナン、マレー、ミルトン、ロバート、ルーカスです。これらの名前は自由主義を標榜する著名な経済学者から取られています。ミルトンは勿論シカゴ・ボーイズの中心人物ミルトン・フリードマンからとっています。

3.ショックによって格差は拡大する

「ショック・ドクトリン」の全てが悪いとは思いませんが、通底しているのは巨大資本が自由に金儲けをするということだと思います。
ショックに伴う国民の思考停止の隙をついて、暗躍した人たちはきっといたことでしょう。陰謀論ではありませんが、仕掛けられたショックもあるかもしれません。
こうしたことが続けば、利益は巨大資本に蓄積されることになります。新自由主義による小さな政府は、優勝劣敗を放置しますので格差は拡大します。
明治の元勲である伊藤博文は、吉田松陰の弟子であり、元々攘夷志士ですが、英国ジャーディン・マセソン商会の世話で維新前にイギリス留学しています。ジャーディン・マセソン商会は、アヘンや茶の貿易で栄えたイギリスの会社です。
明治維新は、欧米の巨大資本が暗躍した日本最大のショック・ドクトリンだったのかもしれません。歴史教科書には書いていませんし、事実だとしても書くわけありませんが。

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