華氏451度

哲学

「華氏451度」は、アメリカの作家レイ・ブラッドベリによって書かれたディストピア小説です。
華氏とは温度のことで、華氏451度は摂氏233度です。この温度になると紙が自然発火するそうです。
物語の舞台は、情報が全てテレビやラジオによる画像や音声などの感覚的なものばかりになった社会で、漫画以外の本の所持が禁止されている近未来です。
本の所持が発見された場合はただちに「ファイアマン」(昇火士)と呼ばれる機関が出動して本を焼却し、所有者は逮捕されることになっていました。主人公のモンターグはファイアマンです。

まとめ
1.思考力と記憶媒体の重要性
2.いつの時代にもあり得る愚民政策
3.権力は必ず情報統制を行うし偏向報道も続く

結論
メディアは批判的に見る。著名人の言説を鵜呑みにせず反対側からも考えてみる。

1.思考力と記憶媒体の重要性

この物語のなかでは、ファイアマンの活躍により人々は思考力と記憶を失い、わずか数年前のできごとさえ曖昧な形でしか覚えることができない愚民になっていました。主人公も夫婦の出会いの思い出すら失ってしまいます。ファイアマンとしての職務に誇りをもっており、人生に何の疑問も抱くことはありません。
本を所持していた老女が家宅捜索の際に焼身自殺を遂げたことをきっかけに、主人公は社会の闇に徐々に気付き始めます。
本は、人間の思考力にとっても、人類の叡智の記憶を保存する面においても極めて重要ですが、内容によっては特定の権力や社会にとって不都合な場合もあります。
古代中国の秦の始皇帝時代の焚書坑儒では、書物を焼き捨て儒者を生き埋めにしました。地動説に触れたコペルニクスの「天球の回転について」はローマ教皇庁から禁書指定を受けましたし、ジョージ・オーウェルのディストピア小説「1984年」はソビエト連邦でスターリンが発禁処分にしています。

2.いつの時代にもあり得る愚民政策

経済成長に関連して、よく人口ボーナスや人口オーナスについて言及されます。人口ボーナスとは、生産年齢人口(通常は15歳以上65歳未満)が豊富で経済成長が促進される状態です。人口オーナスはその逆で、少子高齢化が急激に進む日本は経済規模の縮小が懸念されています。
よく出生率の上昇に関連して政治家が失言して炎上することがありますが、人口ボーナス・人口オーナスというワードには、個人の幸福よりも国家の成長を優先する思想が見え隠れするからかもしれません。
政府にとっては、国家方針に従う従順な国民がマジョリティを占めた方が、都合がいいに違いありません。
愚民政策とは、国民を政治的な無知状態に陥れ、その批判力を奪おうとする政策のことを指します。
古代ローマの「パンと見せ物」による国民の懐柔や専制国家の偏向報道のように国民に全体像を理解させない政策も、そうしたものの一部です。

3.権力は必ず情報統制を行うし偏向報道も続く

先日、偶然にBBCのニュースをみる機会がありましたが、日本で報道されているトップニュースとあまりにも内容が違っていたので驚きました。世界のトップニュースのラインナップとしては、どう考えてもBBCの方が、バランスが良いように感じました。日本のTV局は、株式会社であり且つ電波法の規制業種です。政府やスポンサーの影響は免れません。
ニュース解説の意味や事件の背景がどうしても分からないので、YouTubeの動画を見たら腑に落ちたケースもありました。YouTubeは玉石混交の感はありますが、極端ではあっても面白い視点を提供している動画もなかにはあります。
新聞報道も正しいとは限りません。以前、自分も関与した取材に関する報道で、あまりにも事実と異なっていて驚いたことがあります。記者に電話で抗議したら、編集会議で内容が変更されてしまったと言われてしまいました。
メディアは意図をもって内容を盛っている可能性があるので批判的に見る、そして著名人の言説を鵜呑みにせず反対側の立場からも考察してみるのが丁度よいかもしれません。愚民政策に踊らされたら、大変なことになります。

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